親知らずは本当に抜くべきか?親知らず抜歯のメリット・デメリット
親知らずは抜かないといけないの??親知らずとはどのような歯なのかについて解説します。
親知らずは、親不知とも書きます。親不知は奥歯のうち一番奥にある歯を指し、専門用語では第3大臼歯といいます。また、智歯とも呼ばれています。
人間の永久歯は28本ですが、親知らずは28本の中には含まれません。親知らずを入れれば32本になります。「親知らず」は一般的に誰もがご存知の名称ですが、なんで親知らずと呼ばれているかはあまり知られていないのかもしれません。
親知らずは、個人差はあれ大体20歳前後で生えてくる永久歯です。織田信長が好んで詠ったことで有名な敦盛の一節「人間五十年、下天の内をくらぶれば…」にあるように、昔の日本人の寿命が短かく、親知らずが生えてくるころには親はすでに亡くなっている、というのが名前の由来だと言われています。ちなみに、平均寿命が50歳を超えたのは実は戦後なんですよ。ただ、これは乳幼児の死亡率が高かったことにも原因があります。0歳で亡くなる割合が現在では想像できないくらい高かったんですね。
親知らずは英語でwisdom toothと言います。wisdomは賢さ、知恵を意味します。つまり、物事の分別がつく年齢に生えてくる歯であることが名前の由来です。これを日本語にしたのが智歯または知歯です。
親知らずの問題点は「生え方」!親知らずの生え方が問題なのです。
親知らずは、生えない人もいますし、4本とも生える人もいれば、1本しか生えない人もいて様々です。4本とも生える人は日本人だと35%ほどと言われています。そして、一番の問題は正常に生える例が稀であること。生えてこない場合は、顎の骨の中にある、または歯茎の中に収まっている(埋没)状態のことで埋伏歯といいます。ほとんどの場合、歯茎から頭だけ少しでていたり、斜めに生えます。
親知らずの生え方が変な理由
現代人のように消化の良いものばかり食べている為の退化現象だと考えた方が正しいように思われます。縄文時代は8割の人が親知らずが4本はえていたようですが、鎌倉時代には4割ほど、現代では3割強というデータもあります。昔から、親知らずは必要の無い歯とされてきて、痛みや隣の奥歯に悪影響を与えるのならば抜いてしまうのが一番とされてきました。
現在では、親知らずを将来的に有効活用するために温存する考え方もあります。例えば他の奥歯がダメになったときに移植する、ブリッジをいれる際の土台にする、などです。ですから、親知らずは、無理して抜くものではない、ましてや悪さをしていないのなら抜く必要はない、と考える歯科医師も増えつつあります。
ただ、奥歯が痛い!から診察にこられる方で、痛みの原因が「親知らず」であることが大変多いのが現実です。
抜いたほうがよい「親知らず」とは、どんな場合なのでしょうか?
虫歯になってしまった場合と生え方がよろしくない場合の2つあります。
① 親知らずが虫歯になった場合
親知らずはもっとも奥にある歯ですので、治療器具が届きにくいのです。ですので虫歯になってしまうと、治療やその後のメンテナンスが難しく高確率で再発します。そのため、親知らずが虫歯になったら治療をせずに抜歯をするケースが多いです。
② 親知らずの生え方が悪い場合
親知らずの生え方によっては歯磨きをきちんとすることが不可能な場合があります。その場合、将来的に虫歯や歯周病になってしまう可能性が非常に高く、手前の健康な歯(7番)を巻き添えにしてしまうことがあります。ですので、早めに抜歯しておくことが推奨されます。
具体的には
- 手前の歯と同じ様に生えてきているが、歯磨きが上手に出来ない。
- 中途半端に生えていて、歯の一部だけが見えている。
- 横向きに生えてきている。
- 骨の中に完全に埋まっている(埋伏智歯)が、レントゲン写真上問題がある。
- 歯並びを悪くする恐れがある。
といった場合です。
抜歯する必要のない親知らず
歯を抜かないにこしたことはありません。親知らずを抜くことなく、そのまま残しておいてよいと考えられるケースもあります。
- 手前の歯と同じように生えてきていて、歯磨きも特に問題なくできる場合。
- 骨の中に完全に埋まっていて、レントゲン写真上問題が無い場合。
- その他、特に悪影響を及ぼすことがないと判断された場合。
以上の3つのケースです。
親知らずを抜歯するメリット(口臭や頭痛の原因に)
親知らずは、例えば横に向かって生えて来ている場合、きちんと歯みがきするのは困難です。ですから虫歯、歯周病になる確率も高まります。
そして、親知らずが手前の歯をじわじわと押してしまう厄介な問題があります。これの何が問題かといいますと、噛むと何となく沁みるように感じるといった症状が現れるのです。やがて、そのなんとなく沁みる感覚が徐々にはっきりとしてきます。 親知らずが手前の歯を押してしまっているのが原因なのですが手前や更にもう手前の歯が虫歯になったと感じてしまうのです。奥歯自体は問題ないのに奥歯が痛い!!と感じるわけです。親知らずが原因とはふつうは思いませんよね。
親知らずは、たいてい歯茎に埋もれていたり、少しだけ頭をだしています。そのような場合、隙間に食べ物のカスなどがたまります。これは歯磨きしても取れないために、発酵して口臭の原因になります。
その歯茎が膿んだりして腫れてしまうと痛みが出ます。親知らずの周囲の歯肉の炎症ですので「智歯周囲炎」といいます。これは歯周病(=辺縁性歯周炎)と本質は同じです。
そうなると、噛む度に痛みが出るので物を噛むときに避けようとします。それを続けていると悪い癖がついてしまい噛み合わせが悪くなります。そして顎関節ならびに噛むための筋肉がおかしくなると慢性的な頭痛を引き起こすことがあります。噛むための筋肉というと、顎の筋肉、つまり顔の筋肉だけのように思われるかもしれませんが、首の筋肉をたくさん使います。首は体と脳をつなぐ非常に大切な部位です。噛み合わせが悪いと、頭痛以外にも肩こり・首こり・自律神経の乱れといった様々な症状に繋がる可能性があるといわれているのは、首への負担が原因なのでしょう。
親知らずは、扁桃や咽頭などの組織、および口を開け閉めする筋肉(咀嚼筋)などに近いので、頭痛を始め、体への悪影響を及ぼす可能性が高いのです。原因不明の内臓の疾患が、実は親知らずが原因だった、というケースもあります。
このように親知らずが悪さの原因の場合の解決方法は、親知らずを抜くしかありません。
親知らずを抜歯するデメリット
みなさん、「痛そう」とか、「抜歯後に腫れる」・・・と思われる方も多いですが、実は正しい抜歯をすればデメリットはありません。
ただ、デメリットがないとはいえ、あくまでも抜歯は外科手術です。
また、歯は臓器の1部なので、摘出する作業は簡単ではありません。通常であれば、腫れたり、痛みが出るのは、当然の事です。
その抜歯を痛みなる施術する極意は、なるべく傷口を小さくし、親知らずを細かくして取り出すことです。
それだけではなく、抜歯後の傷の治りを早めるために、使用可能な生体材料も使います。(これが、保険適応外)
また、化膿することを防ぐために、抗生物質や鎮痛消炎剤も服用します。
それだけ十分な処置をすることができれば、親知らずの抜歯で、「痛い」とか、「抜歯後に腫れる」ことはほとんどありません。
また、処置以外に関することとして年齢によっては親知らずを抜かない方が良い場合もありえます。
それだだけではなく、抜いてしまう事により、手前の歯が炎症を起こす場合もあります。
逆に、若い年代での親知らずの抜歯は、できるだけ(もちろん必要ならば)推奨します。
将来的には、親知らずは臓器ですので、再生医療に使用されるかもしれませんね。
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