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天気と歯の痛みについて思うこと

古傷が痛むと雨が降る

雨が降ったり、台風がくると頭が痛い、肩がこる、体調が悪い・・・当院にこられる患者さんから聞くことがあります。私自身も経験があります。みなさんもきっとあることでしょう。

日本では昔から「古傷が痛むと雨がふる」といわれています。

天気が悪いと体調不良になる、歯が痛くなる人、疼く人もいます。お天気と体調は深い関係があるのは間違いないのですが、歯科医師の視点から、お天気と歯痛の関係についてちょっと考察してみたいと思います。

天気予報は各地の気圧の測定結果に基づきます。

まず最初に気圧について簡単に説明します。

気圧とは、気体の圧力の意味ですが、一般的に空気の圧力である大気圧のことを気圧と呼びます。これは空気の重さによる圧力です。上に乗っている空気の量により変わりますので、地表からの高さ、空気の動きで変化します。

気圧はよく高気圧、低気圧と表現します。気圧が低いということは、わかりやすい例ならば、高い所です。山の上や飛んでいる飛行機の中です。上にいけば行くほど気圧は下がります。

ちなみに、気圧は海面上を1気圧とします。海面上が高度0mだからです。そして1気圧=1,013hPa(ヘクトパスカル)と定められています。このヘクトパスカルという単位はテレビの天気予報でもお馴染みでしょう。

全国各地、海上、外国で測定される気圧の数値(海上の場合に換算)を、地図上に記し、同じ数値を線で結んだものを等圧線といいます。等圧線が描かれた図を気圧配置図といいます。

気圧の変化と歯痛の関係

風というのは、気圧の高いところから低いところに流れ込むためにおこります。風が吹く、というよりは、吸い込まれる、という表現が適切です。つまり気圧配置から風向きが予想されるわけです。

このように、風向きや大気の温度、状態から予想されるのが天気予報で、そのもとになっているのは気圧なのです。

体調に影響を及ぼすのは、天気の良し悪しではなく、気圧の変化です。

日本人にとって悪天候の代表といえば台風です。台風というのは熱帯低気圧です。ハリケーンやサイクロンも同じ熱帯低気圧です。発生する地域によって 名前が異なります。台風の強さは風速と大きさで表現されますが、中心気圧の数値も天気予報では示されます。昔はミリバール、今ではヘクトパスカル (hPa)という単位です。台風の強さというのは風速や大きさによりますが、中心の気圧の数値が低いほど強いといえます。台風の周りと台風圏内の気圧の差が大きければ大きいほど、それだけ風が強くなるというわけです。

台風がくるということは、台風のエリア内では気圧が下がるということはご理解いただけたと思います。

一般的に、気圧は、10m高くなるごとに大体1hPa下がります。ですから、 例えば台風の中心気圧が950hPaというこのは、地上630mの高さの場所と大体同じ気圧ということです。この高さは、東京スカイツリーの高さ(634m)とほぼ同じですね。

では、東京スカイツリーの展望台まで、エレベーターで一気に上がると・・・多くの方が経験あると思いますが耳がキーンとなったりしますね。これは鼓 膜の内側と外側の気圧のバランスが崩れるために起こるもので航空性中耳炎といいます。中耳炎という名前ですがこの場合は炎症ではないのでご注意を。これは鼻をつまんでつばを飲み込んだりして耳抜きすれば治ります。

山ではどうでしょう?富士山は標高3,776メートル。山頂では約377,6hPaも地上より低くなっています。地上の3分の2ほどの気圧しかあり ません。山で体調が悪くなるといいますと、まっさきに思い出されるのが高山病だと思います。高山病ときくと、高いところは酸素濃度が薄いから・・・じつは 富士山の山頂も地上も酸素の濃度は変わりません。大体21%です。しかし、気圧が違うので、空気の密度自体が低く、単位容積あたりの酸素が少ないのです。ちょっとややこしいですね。

気圧の変化で体調に変化が出ないほうが不自然な気もしませんか?。

では、低気圧になると歯が痛むことはあるのでしょうか?

歯科の専門用語で、航空性歯痛という言葉があります

長時間飛行機に乗っていると歯が痛くなることがあります。飛行機の機内は、常に約0.8気圧と地上よりも20%低い気圧にに保つように設計されています。
航空性歯痛は、上顎洞とよばれる鼻の両サイドにある頭蓋骨の中の空洞部分の内圧が増すことで、歯の神経を刺激するために起こるものとされています。

実際に歯に問題があるわけでなく、歯が痛いと感じる神経を刺激してしまうこともあるのです。

Maxillary sinus

ですから、雨や台風(時には曇りでも)などで天気が悪くなり、その結果歯が痛くなることは、確かに、あると思います。
しかし、天気が悪くなって歯が痛くなったから歯医者にいく人は少ないと思います。おそらく一時的な痛みでしょう。

気圧の変化による体調不良というのは、気圧が変化することで神経(特に自律神経)に影響を与えるためといわれております。もちろん歯の中には、歯髄とよばれる神経がありますので、そこが影響を受けて痛みを感じることがあるのかもしれません。

スカッと晴れた青空を見れば、気分は爽快になりますが、どんよりと暗くたちこめた雲をみればテンションが下がる人が多いように、目で見たものも、つまり視神経を経由し、気持ちに影響を与えます。匂いも同じです。ですから気圧と神経について掘り下げるとキリがありません。歯科医師の視点から、もう少し単純に考えてみたいと思います。

歯の内側には空洞があります。

一般的に歯の神経として知られている部分は、歯髄といいます。歯の断面図をご覧になられたことがある方は少なくないと思いますが、歯髄があるところが空洞になっていると思われている方はきっと少ないでしょう。

歯髄腔

この歯髄腔の中の気圧は、普段は外の気圧と一定になるように保たれています。急激な気圧の変化があれば、歯髄腔の中の気圧と差が生じてしまいます。気圧が低くなれば、歯髄腔の中の気圧が高くなってしまいますので膨張しようとします。その場合、歯の神経が入っているところなわけですから、痛みにつながる可能性はあります。

とはいいましても、歯は固いので健康な歯であれば、気圧の変化は受けにくいものだと思います。

では、気圧の変化で歯が痛みやすい人の歯はどのような状態なのでしょうか?

むし歯の治療している歯は、金属ないし樹脂にて削った部分を覆っています。

虫歯を残していると・・・虫歯菌にとってお口の中は最高の環境です。温度、湿度、栄養分と菌が繁殖するのに好条件です。だから、詰め物にちょっとでも隙間があると、中に入り込みこみ、また虫歯を作ります。でも表面は金属、樹脂などで詰められているので、わかりにくくなっています。

また、何もしていない天然歯の場合、虫歯などがあると、そこには隙間が出来ます。
その隙間に空気や虫歯菌が入り込みます。昔は、虫歯菌は穴を開ける時、工事をしているとかいわれていました。現代では、その理論も多少違ってきまして、虫歯菌がコロニーというバイオフィルムを作ってその中で生活しながら、穴(歯科用語で実質欠損といいます。)を作るといわれています。

穴というより歯の質を溶かすと言ったほうが正解かもしれません。
溶かすのですから、当然柔らかくなります。柔らかくなるので密度も低くなりますね。そうなると更に溶けてしまうのです。そこで出来るのが、先程でてきた実質欠損です。

穴が空いた部分は、仕方がありません。取り敢えず痛くないのならば、歯医者さんに行くのも嫌な事だし、様子をみているとします。

さて、話を歯の種類に戻します。

神経を処置した歯とは、わかりますか?

歯には、歯髄と呼ばれる神経があります。その歯髄は、根管といわれている長い管とも繋がって知覚と呼ばれる神経に繋がっています。神経が残っている歯で、歯が痛くなるということは、虫歯で痛くなるので、かなり進行した状態です。

今では、神経に達する虫歯でもMTAと呼ばれる材料が神経を残してくれます。では、虫歯菌で侵されて痛くなってしまった歯は、残念ですが、神経をとってしまうことになります。神経を取るというのは、歯髄といわれている部分と根管といわれている管の部分までの範囲です。全部ではないのです。神経を処置した歯でも咬んだら感じますよね。神経を取るのは、その手前までなのです。

それ以上神経を処置してしまいますと、当日、神経を処置したのに痛くなる事があります。俗にいう打診という嫌な感じが残るといわれています。勿論、その手前まででも起こる場合もありますが。

物を咬んだら噛んだ事がわかる組織、感覚受容器というものがあります。それが丁度神経の先(歯科では根尖と言います。)まで、お薬を入れて行く事を根管治療といわれています。

歯の神経の頭、歯髄は、直ぐに削り取れますが、根管といわれる管は別です。長い根管では、20ミリ(約2センチ)位長いのもあり、また、曲がったりしているのもあります。

ズバリ、根管内の神経を取ることは簡単なことではありません。難しいのです。

でも現在では、神経を機械で一気に取りさる方法が確立されています。

ここからが大事です。

神経を処置した歯は、痛みを感じにくくなっています。

ある程度まで根充剤と呼ばれるお薬を入れておけば直ぐには神経を処置した歯は痛くならないのですが、それは隙間があっても痛くはなりません。また、根管が空洞でも通常では痛くない事もあります。

さて、こんな隙間に空気が入っていたとします。

天気が悪い(=低気圧)ときは、中に入っている空気は膨張します。

逆に気圧が高いのは、海面上が基準となる1気圧ですので、その下、すなわち水面下です。水の中ですから、いわゆる水圧とよばれるものです。

10mで1気圧分加算されます。海面上は大気圧による1気圧で、そこに1気圧分プラスになるので,水深10mでの水圧は、2気圧に相当するわけです。

地上の倍の圧力がかかるんですね。このような気圧が高い状態では、歯の中の空気は圧縮されます。

不思議と圧縮される場合は、隙間の空気も小さくなるので、隙間は他の滲出液で例えば虫歯ならば、だ液、根管内では、大きなのう胞などの膿がある場合は、浸出液が収縮します。

気圧の変化でお口の中はこの様な状態になるのです。それが痛みを伴うものもありますがなんとなく違和感、またまだ大丈夫。といって違和感もない場合もあります。

気圧の変化に耐えることが出来るような歯の状態を維持するには?

まず 第一には、虫歯があれば虫歯の治療。なるべくなら神経は残しておいた方が良いものです。(きっぱり)

もしも、治療した歯の隙間が痛くなったら、レントゲン写真撮影して虫歯の確認。現在では、マイクロスコープという歯科顕微鏡があります。5倍~30倍位まで拡大さらに録画出来る装着があります。(それ以上の拡大録画も出来ますが、暗くなります。)それで確認すれば隙間の虫歯もわかります。また、MTAなどで直接覆罩を使用すれば神経は残せるかもしれません。

ただ、実質欠損といわれている虫歯の場所は、残念ながら最小限に削って詰めておいた方が良いと思います。(これもきっぱり)そこには、気圧の変化に左右される空気が入っている事があるからです。

では、神経を処置した歯はどうでしょう?

根管内は神経組織がなくなって空洞になっています。通常、歯科医院では、何かしら細菌が繁殖しない様な薬(根管治療薬)を入れておきます。でも、根管治療薬と言われている薬は通常は液体です。そのままにしておけばどんな薬でもある程度までは、気圧に耐えられる様にはなっているかとも思います。痛くなくても根管内のお薬は濃度が根管内細菌により少しずつ薄まっていきます。

これは、どんな薬でも同じです。根管内に詰まっている薬の変化は、時間の経過とともに濃度が変わるので、気圧の変化に左右され易くなります。

痛みを感じる感覚受容器は、根尖とよばれる歯の根っこの先っぽにあります。従って単純に根管内に根管治療薬が入っているだけですと、気圧の変化により、漏れ出たり(これは、痛みが出る場合もあります。)するわけです。 漏れ出た滲出液は、感覚受容器を刺激してしまいます。

それが、気圧の変化では左右されるのです。それが、飛行機に乗ると歯が痛くなる、ダイビングすると疼く、などといった症状として出るのです。

では、どうすれば、気圧の変化でも神経を処置した歯が痛くならないのでしょう?

答えは実にシンプルです。

根管内をしっかりと密に根充剤やMTAと呼ばれるお薬で埋めてあげれば良いのです。もちろん隙間がないようにです。さらにそのお薬は液体では無くて固体やコンクリートの様な物です。

その手順について説明します。

まず、準備として治療する歯を、お口の中にいっぱいいる菌と完全に分離させます。ラバーダムというものを用いるのですが、そうですね、建物でいうと工事中の養生シートみたいなものをイメージしてください。これをラバーダム防湿法といいます。

そのラバーダムを使用した上で、根管内の清掃作業をします。細菌が完全にいないキレイな管にしないといけません。暗くて細くて複雑な管の清掃作業、これにはマイクロスコープが必要です。肉眼じゃ見えませんし、完全な清掃はほぼ無理です。

そうして綺麗になった根管の中を、空気、液体が入り込む隙間がないように確実に塞ぎます。それには固体の薬をしっかり埋め込む作業がとても大事なことになります。
こうして根管に隙間なく固体が埋まっていれば、細菌や膿も溜まる事もなく、気圧の変化にも左右されない神経を処置した歯が出来上がります。

神経を処置した歯の治療法をお話しします。

当院では、残念ながら神経を処置せざるを得なかった歯に対して(抜髄根管治療と呼びます。)歯髄、根管内の神経をお薬を使わずに機械的に清掃して除去していきます。空洞になった歯髄腔、根管に薬が入る隙間を作ります。勿論、予め、ある道具で根尖の位置を確認しておきます。特殊な機械を使って根管を拡大します。(根管形成と呼びます。)

ラバーダムから入る作業、これらは全て痛くない麻酔処置をしてから行なう作業ですから、大体60分位かかります。拡大した根管内に次亜塩素酸と生理食塩水でくどい様に細菌を洗い流します。さて、神経を処置した日から2回目、再度、麻酔をしてから、ラバーダム、根管の明示、マイクロスコープでの根管の中の汚れ具合の確認。消毒、ガッターパーチャーと呼ばれる材料で根管内を詰めます。当院では、予めこのガッターパーチャーを温めて柔らかくしております。曲がった根管にも綺麗に入り込みます。更に、根尖部といわれてる所は、複雑に分岐しているといわれています。温めた固体のガッターパーチャーだけでは心配です。そこで、シーラーと呼ばれる固まる液体をこの固体と組み合わせます。これで、根尖の複雑な所まで、薬を入れていくのです。

そうする事で、空気の入らない密な根管治療が出来る事になります。

抜髄根管と呼ばれる神経を処置した歯の治療法はこんな感じです。

では、最も複雑な感染根管についてです。つまり、既に何かしらの薬が入っているのですが、さらに、空洞もある場合です。これは、成功率も下がり通常は難しい治療です。

現在では、MTAと呼ばれる無機質の材料が革命的良好な成果をあげていますが、大事なのは、感染物を完全に除去するという作業です。具体的には、マイクロスコープなどの拡大機器で根管内に見える汚れを徹底的にキレイにしていきます。

根管内がきれいになれば、感染源がなくなる訳ですから治療としては、成功です。
肉眼やルーペの治療では、感染源が残っているかどうかは、見えないので分かりません。(これは、現実です。)
悪い部分が見えれば、当然治せる可能性はかなり高くなります。
治療の成功率が上がります。

これら根の痛みから解放されるのを私達、歯医者は、望んでいます。
マイクロスコープでの見える根の治療(マイクロエンド)ならび、MTAを使用しての根充法は、保険適応になっていません。
従って、被せる材料が全て自由診療になってします。
費用はかかりますが、本当に確実な治療法です。


患者さんから痛くないとお声の多い「親知らず」の抜歯方法!痛い・腫れるはもう間違い!?

親知らずを痛みなく抜く方法・・・あるんです!

歯を抜くことは痛い!!麻酔をしても麻酔が切れたら痛い、親知らず抜いて激痛で友達が苦しんでいた、顔の輪郭かわるくらい腫れていたetc・・・親知らずを痛みなく抜く治療方法なんて、信じてもらえないと思います。

痛くない抜歯の方法はあります。

歯は、根っこの先っぽに行くに従って細くなっています。ですから引っ張れば、抜けます。でも引っこ抜くのには力が必要です。

歯を抜くというとペンチみたいなゴツい器具で挟んで抜くと思われる方が大半でしょう。ましてや奥歯なんてどうやって抜くの?口を大きく開けたところで・・・とくに歯を抜いた経験がない人なら想像つかないですよね。

抜歯にはテコの原理を利用するのです。そしてへーベル(エレベーター)と呼ばれる器具を使います。実は、ヘーベルという名前は英語のエレベーターのドイツ語です。エレベーターはご存知ビルにある昇降機ですが、もともとの意味は上に上げるという意味です。日本語の梃子(てこ)は英語だとレバーです。エレベーターもレバーも少し似ていますね。共に、上に上げるという意味のラテン語が元です。歯を抜くということの理解において、ここがポイントです。抜くというと引っこ抜くことを想像されると思いますが「上にあげる」ことが大切なのです。

ヘーベルには色々種類がありますが、私が愛用しているマイ・ヘーベルは、

YDM D型#NM2 日大型ヘーベル

株式会社YDMのD型#NM2、通称、日大型ヘーベルです。

これで、どうやって・・・?不思議ですよね。金属製の耳かきにしかみえないですよね?

簡単に説明しますとヘーベルを歯と骨の間に入れます。そこで、てこの原理を利用して押し上げるのです。潜っている歯は、ヘーベルを使って割ります。割ったかけらをを少しずつ取り出し、結果的には歯を抜くことになります。もっと細かい詳しい使い方は、なるべく早く、かつ、傷口を小さくする事です。傷口が小さければ、当然ながらその分周りの組織へのダメージも少なくなります。ダメージが少なければ、傷の治りも早く痛みも最小限に抑える事が可能になります。ただし、それだけでは、本当に抜歯後の痛みを取る事は難しいかもしれません。当院では、抜歯後にその部位に薬を入れる様にしています。その薬は、場合によっては、ステロイド剤であったり、リドカイン入りの生体材料であったりと、抜歯後の傷口にあった材料を使います。何も薬も使わずに痛くなく治すのは、正直難しいと思います。

ただ、皆様に申し上げたいのはこのへーベル1本だけで抜歯自体は完了できるということです。

私が、このへーベルを長年愛用している理由は、先端部がスプーン状で薄く幅が広めになため、歯と骨の隙間に入れやすいこと、そして持ちやすいためです。この私自身コダワリの1本を使いこなすことで、ほぼ、すべての歯に対応できてしまいます。

これは、あくまで私自身がベストと思っている抜歯方法です。歯科医師によって方法は様々かもしれませんが、間違いなくいえることは、歯科医師は医師であり、かつ職人なのです。

どんなに薬や医療機器が進歩しても、手を使った技術は絶対に必要ですし、せっかくの最新機器も使いこなすことはできません。

腕の良い歯医者えらびの本当のポイントは、見た目や設備ではなく、手先がいかに器用な人かどうかかもしれませんが、それは実際に治療を受けてみないとわからないですよね。

歯を抜いたあとに腫れて痛むのが怖い・・・

歯を抜いた後が怖い方は多いようですね。きちんと丁寧に治療すれば、腫れることも痛むこともありません。(勿論、外科処置であるため鎮痛消炎剤や、抗生物質は飲んでいただきます。)具体的な抜歯後の処置ですが、痛み止めのお薬をスポンゼルという止血用のゼラチンスポンジに浸みこませて傷口に入れます。傷口に入れるお薬は、抜いた部位により、変える様にしています。コロナウィルスで有効であったステロイド剤であったり、リドカイン入りの生体材料であったり、それぞれ傷口の状態にあった材料を選んでいきます。なお、麻酔が効いているので施術当日は薬も服用しているのであまり痛みはありません。(完全とはいきませんが。)もちろん麻酔が切れてしまったら、痛むこともあります。それを防ぐために、当院では翌日、翌々日に抜歯した部分のケア(消毒、殺菌)もバッチリ行ないます。当院で歯を抜いた患者さんで、腫れや痛みが治まらないといった方は少ないと思います。。追加ですが、勿論傷口ですので、痛み止めや抗生物質は、必ず服用してもらいます。(これは、やはり服用しないと痛みを軽減する事は難しいです。)

なお歯茎(歯肉)の切開が必要な抜歯の場合は、糸で傷口を縫合する場合があります。縫合に使用した糸は抜歯してから1週間〜2週間で抜糸(ばっしと混同しないように、ばついとと呼ぶことが多いです)します。抜糸については、通常の糸4-0の場合は、1週間後、細い5-0の糸の場合は、テルプラグも挿入しているので2週間後の期間をもらっています。

親知らずの抜歯についてご説明します。

痛みなく歯を抜く方法についてご説明しました。親知らずを抜く場合も、基本的な方法は同じです。ただし、奥歯なだけに高度なテクニックが要求されます。具体的には、先ずCTを撮りどういう根っこの形態をしているのか正確に判断する必要があります。根っこの形態や埋まっている方向がわかれば、おのずと抜くべき方向性がわかります。

従って、経験と技術があれば痛みなく奥歯を抜くことができるんですよ!!とお伝えしたいのです。皆様が、歯医者にいく場合、ほとんどが、家の近所、職場の近くにある、という理由で選ばれることでしょう。その際に、痛みなく抜けますか?と事前に質問していただき、行くべきかどうかの判断材料にしてほしいのです。コンビニの数よりも多いと言われる歯科医院。通いやすさ、見た目だけで選んで後悔はしてほしくありませんし、何よりも「歯医者=痛い、怖い、嫌い」といったイメージを持っていただきたくないのです。

ただ、傷口を早く治すのが痛みを取る早期の対応の為、縫うだけでは、正直痛みを取るのが難しい現状があります。スポンゼル以外にテルプラグというコラーゲン製剤があります。保険診療適応外の材料なので、自由診療になってしまいますが、これは、抜歯後の傷口の早期改善に役に立ちます。

また、骨を乾燥させない生体材料や、ステロイド剤も痛みを取るのに有効です。

親不知を抜くことは外科手術を受けることと同じ

親知らずの抜歯は、分類でいえば外科手術です。ですから歯医者さんで行わず紹介された大学病院の口腔外科で行うケースが多いのです。親知らずを抜くとなったら大学病院紹介されたって話よく耳にしませんか?

でも、大学病院に直ぐに回さないで、自分で抜歯を極める事が大事です。そうすれば、抜いたのも判らない様な治療が出来る様になります。このようにはっきりと言いきれるのも、私自身がひたすら技術を磨くことに専念し、多くの経験を経て自信をもって治療に臨むことができるようになった現在(いま)だからこそです。親知らずの抜歯はバッチシ(抜智歯)です、おまかせください(笑)なお、抜歯をする場合の歯医者さん選びのポイントは「口腔外科」を標榜しているかどうかが一つの目安になります。

親知らずの抜歯後の抜糸について。

親知らずの抜歯の際に、縫った、縫わなかった、と体験談は様々だと思います。歯茎に埋もれてしまっている親知らずである埋伏智歯の抜歯は、歯茎(歯肉)の切開が必要です。そのため抜歯後に糸で縫合するのですが、上顎の場合は、当院では特別なお薬を使うので大抵は行ないません。そして上顎は、目や耳、鼻などの重要な器官がある為、血管が多く、その分治りが早いのです。下顎は、どんな場合でも必ず縫います(きっぱり)。

縫合に使う糸について説明します。よく手術で使われる吸収糸は、当院では使いません。吸収糸とは、抜糸の必要がない糸です。生体に吸収されて無くなってしまうタイプの「溶ける糸」です。

何故、吸収糸を使わないかといいますと、強度の問題があるためです。お口の中ですので、食事はもちろんのこと、声を出さないわけにもいきません。そっとしておくことは不可能です。せっかくの縫合が取れてしまっては大変です(特別なお薬が漏れてしまいます!特にテルプラグなど)。

ですので、丈夫な糸が必要不可欠です。傷口への負担を最小限にするために、出来るだけ細い針と細くて丈夫な糸を使用します。具体的には5-0と呼ばれる糸を当院では使用しています。近年ナイロン製の糸もありますが、当院では、絹糸にこだわります。(訳は傷口がはっきりとわかるようにしなければなりません。当然切って外すわけですからね。また、体の中に入れるものです。人工の糸よりも天然の糸のが良いと思いませんか?ナイロンの糸は傷口に食い込みます。抜糸するのに見えなくなる可能性があります。)

傷口の状態にもよりますが、通常では、抜歯してから1週間、歯肉内にテルプラグなどのコラーゲン繊維を使用する場合は、2週間後に抜糸します。糸は、そのまま放置するとバイキンの温床になる可能性がありますので必ず抜糸します(きっぱり)。

抜糸の際の痛みは全くありません。(リドカイン入りの生体材料を塗って使います。)

嫌われても仕方がない。でも患者さんのため…

患者さんの中には、親知らずをそのままにしている方が多く見受けられます。痛くなければ当たり前のこと。真っ直ぐ縦方向に生えている場合は、そのままでも良いでしょう。しかし、先ほども説明したように、親知らずによる痛みは、隣、またはその隣の奥歯に現れることが多いです。親知らず自体は痛くなく、奥歯が痛いから歯医者さんに来ました、というケースですね。

当院にこられる患者さんの場合、まずレントゲン写真を撮り、痛みの原因は虫歯ではなく親知らずが原因ですよ、と説明しますと納得はしてくれますが・・・歯を抜きたいとは言ってません。私は、歯医者さんなので、何とか原因を取り除いてあげたいので、親知らずの抜歯を提案するのですが、歯を抜く、しかも生え方が悪いだけ、ということですので抵抗感あるのは当然ですね。

ただ、歯は普通は抜きたくないものですし、私自身も歯は抜かずに残してあげるべきいう強い信念をもっています。ですが、親知らずだけは別なのです。こればっかりは仕方がありません。虫歯や歯周病と関係なく、生え方によるんですから・・・人間の体でいうと不必要なものかもしれないけどみんなもっているもの、例えば男性の乳首、あとは盲腸と同じなのだと思います。

早い話、嫌われますよね。歯医者にいったら歯を抜かれた、ということです。これはいくら痛みの少ない抜き方をしたとしても、やっぱり心理的にはいいものではないです。それはよくわかるのです。ですから、大学病院に行って貰いたい気持ちも正直あったりするのですが、ここは腕の見せどころ!私は、その場では嫌われても、将来的には患者さんにとって良いこと、そして結果的に患者さんとの信頼関係が深まってくれると信じています。

でも、やっぱり嫌われ役はつらいです。できれば、好かれたいですよ(笑)

このブログ記事を読まれて、親知らずを抜くことをお願いされたら、歯医者冥利につきます。

ただ、1点、気に留めていただきたいことがあります。

それは、ここで述べました痛くない抜歯治療は、保険適応外の材料を使用するので、費用が多少多くかかってしまうということ。精密かつ確実な治療にはマイクロスコープは欠かせませんし、機動性の高いルーペも併用する場合もあります。マイクロスコープを使った治療も必要になります。

また、下の親知らず抜歯に関しては、CTも必要な場合が多くなるのも現状です。

勿論、全てが保険診療であれば、なお良いのですが・・・患者さんの負担が少なくてすみますので、町の歯医者としてはそうしたいのですが、法律に逆らうことはできません。そこだけは、どうぞ、ご理解ください。

親知らずで利用するマイクロスコープとは?

マイクロスコープとは、歯医者の施術時に利用する顕微鏡です。
拡大倍率によってそれぞれ、対応する能力を秘めた医療機器で、実は東京でも数院でしか利用できない大変高度なものです。

マイクロスコープとルーペを使用することで、より細かな施術が可能になります。
また、初めて来られた患者様はみなさん驚かれますが、当院では施術の内容を撮影しています。
撮影することで、後から施術をみることができるだけではなく、前回との状態を比較しながら一緒に撮影した動画を確認することでより安心して施術を受けていただけると大変好評です。
保険診療にはそういった項目がないので、大方の場合は、残念ながら自由診療にもなります。

マイクロスコープで記録することでより安心して術後も対応が可能です

当院では、抜いた歯は、勿論ご自身にお渡ししております。(貴重な再生資源になるかもです。しかしながら約24時間以内に凍結保存しないとその後再利用は難しいのが現状です。)
また、抜歯後、止血した状態と傷口をマイクロスコープである程度、拡大して記録しておきます。
翌日の消毒時には、その状態の撮影と昨日からの傷口の変化、抜糸と呼ばれる糸取り時にも傷口の変化の撮影と前回との比較を患者さんに確認してもらっています。
難しかった親知らず抜歯では、1か月程、経過観察する場合もあります。
それらは、全て撮影の記録して残しておきます。

親知らずを痛みなく抜くのにかかる費用について

歯を抜く場合の治療費については、当院のウェブサイトの費用例のページをご覧下さい。自由診療(保険適用外)の費用例を2種類説明しています。

⇒ 抜歯の治療費 

親知らずと口臭の関係

誰もが気になるお口の臭い……実は、親知らずと口臭は深い関係があります。親知らずが臭う、どんなに歯を磨いても口臭が消えない、また、親知らずを抜いた後の口臭がきになる。是非こちらの記事もご覧ください。

⇒ 親知らずと口臭の関係性


歯医者の視点から板野友美さん(元AKB48)の八重歯と矯正を考察

元AKB48の『ともちん』こと板野友美さんは、男女共に非常に人気があるようですね。

少し前に春に高須クリニックが行った「美容整形でなりたい顔ランキング」というアンケートでは、板野友美さんが堂々の1位を獲得。男性のファンが多いという先入観があるため、ともちんと同じ顔になりたい、という女性がとても多いということに少々驚きました。

私自身も板野友美さんは綺麗で素敵だと思います。

でも、歯医者である私は、随分前から彼女の左側の八重歯が気になっていました。

八重歯は、お口の健康を考えると、歯科医師の立場からすれば、ちょっと考えものです。八重歯の場合、どうしても歯ブラシが隅々まであたらないので、虫歯や歯周病、歯肉炎といったトラブルを招く可能性があります。

八重歯=カワイイ は日本独自の文化

八重歯が招く歯のトラブルの問題はさておき、八重歯はチャーミングポイントと思われる方が多いのは事実です。板野友美さん以外にも、最近だと、ももいろクローバーZの百田夏菜子さんなども人気ありますね。これは女性に限ったことではなく、藤原竜也さんや福山雅治さんも笑った時の八重歯がチャーミングポイント(今は矯正されたのかもしれません。)だったと思います。

このような八重歯に魅力を感じるのは日本独自の文化のようで、たしかに言われてみれば、海外の人で八重歯というと‥‥思い当たりません。

海外での八重歯について、少し調べてみました。

欧米
八重歯=ドラキュラ、というキリスト教圏における悪魔のイメージがあり忌み嫌われています。ですので、八重歯は矯正するのが一般的だそうです。また、アメリカでは、歯に対してお金をかけることが、社会的なステータスと結び付けられがちでもあります。
中国
地域によるようですが、虎の牙を連想させるために嫌われるようです。また、楊貴妃が明眸皓歯といわれたように、やはり美しい歯が好まれます。
台湾
日本から近く、親日な人が多い台湾でも、八重歯のアイドルは圧倒的に少数だそうです。これは韓国でも同様とのこと。

八重歯は日本以外では、治すべきものという認識が当たり前です。ただ、これが日本だけがおかしい、特殊という話でもなく、たとえば「すきっ歯」はフランスでは福を呼ぶ幸運の女神とされています。ヨーロッパの中でも特にフランスでの話です。実際、すきっ歯の女優や有名人は多いのです。

なぜ日本人は八重歯をカワイイと感じるのでしょうか?

八重歯ガール(朝日新聞出版)のある八重歯女子ブロガーで文筆家の前川ヤスタカ氏は「八重歯がかわいいと思うのは、赤ちゃんがかわいいのと同じくらい当たり前のもの。この発想は、日本人独自の文化だ。」とおっしゃられています。

では、何故八重歯が日本人にのみ、こうしてここまで許容されるようになったのでしょうか?

前川氏によれば、以下のような事が考えられるといわれています。

  1. 顎が小さい民族ゆえ、八重歯人口が多く市民権を得たから、
  2. 日本では、不完全なものに美を見出すため。
  3. やわらかいものばかり食べて、八重歯になる高貴な身分の人への憧れから。
  4. 歯が生え替わる時期の幼さや若さを象徴しているため。
  5. 歯を出して笑わないから。
  6. アニメなどでデフォルメされるなど、八重歯が可愛さの象徴になった。
  7. 歯列矯正費用が高額で、矯正への抵抗感があるから。

女性セブン2012年3月1日号より

との事です。

板野友美さんが、もし八重歯でなかったら‥‥

歯医者さんの私としては、仮に板野友美さんが八重歯矯正したら、こうなるであろうという画像を加工してみることにしました。まず、こちらが元となる板野友美さんの画像です。

板野友美さん(オリジナル画像)

彼女の場合は顔が小さいので、まず小臼歯の1~2本の抜歯。そして、その隙間に八重歯になっている犬歯を入れます。そうすると、

八重歯を矯正した場合の板野友美さん

こんな感じになります。八重歯が無い板野友美さんは、いかがでしょうか?

意地悪な私は、では、もし更に、親知らず(親不知)があの彼女に生えてきたらどうなるかな?と思いました。親不知は、奥の歯を前に押して生えて来ます。時間をかけて押して来ると大体、糸切り歯のあたりまで、押して来ます。すると左右の八重歯が出て来ます。

そうなると

左右共に八重歯の場合の板野友美さん

こんな顔になります。

ちょっと恐い顔にみえなくもないですが、でも魔性という面では、この顔の板野友美さんでも大人気かな?とも思えてしまいます。

3枚の画像をアニメーションでまとめてみました。しばらくの間じっとご覧ください。

板野友美の矯正による変化アニメ

[結論] 可愛いものは可愛い!

異論は認めます(笑)

これでは、身も蓋もないですね。良く見ると、やっぱり前の方が可愛いかな?八重歯は、両方よりも、やはり、片方が可愛いのでしょう。

そういえば板野友美効果でつけ八重歯が大人気というニュースもありました(今も流行っているのかな?)。つけるだけでは飽き足らず、八重歯にしたい、という矯正(と言えるのか疑問ですが)を希望する女性も増えていると聞きます。歯科でわざわざ八重歯にすることについてはもちろん賛否両論あります。

因みに、当院では、八重歯にする矯正及び、全顎矯正は、現在診療を受けておりません!

当院の信頼出来る矯正専門医に紹介させていただいております。

八重歯ができる原因

ところで、八重歯はなぜできるのでしょうか?

これには2つの原因があります。

歯の生える順番」と「顎の大きさ」です。

成人の歯は上顎と下顎それぞれ14本ずつの合計28本あります。一般的には6歳ごろから乳歯から永久歯へと生え変わります。生え変わる順番は、最初に第1大臼歯(上の奥歯から2番目)が生え、次に中切歯、側切歯(上・下の前歯)と続き、最後に第2大臼歯(上の奥歯)です。だいたい12歳~13歳ごろまでに全部の歯が生え変わります。

八重歯となる歯は主に上顎の犬歯です。この上顎の犬歯が生えてくるのは11歳~12歳ごろと、ほかの歯に比べると比較的遅いんですね。下顎の犬歯のがはやいです。通常ですと何も問題なくキレイに生えます。ところが歯と顎の大きさが調和していないと歯のサイズだけが大きくなり、犬歯がきちんと納まる場所がなくなってしまいます。そのため歯の列から前に飛び出してしまい、八重歯となってしまう、と言われています。

大人で八重歯の方は、治したいと思われる方が多いと思います。しかし、歯の矯正は時間もお金もかかるということで、放置されているケースがほとんどでしょう。

八重歯にならないようにするには?

お子様が八重歯になったらどうしようと、ちょっと不安に思われている親御さんもいらっしゃると思います。

八重歯は、男の子よりも女の子に多く、右よりも左に多いのです。これは、噛む力、と、右利きが多いということに原因があるようです。また、遺伝的な要素もあるとも言われています。

八重歯にならないようにするためには、食事はしっかりと噛んで食べる習慣をつけること、アゴを鍛えるために柔らかいものばかりでなくバランスのとれた食事をすること、そして噛むときに左右均等にすること、これが大切なのではないかと思います。

よく噛んで食べなさい!‥‥古くからいわれてきた言葉ですね。人間の体は、食べ物は口でよく噛むことを前提に作られています。唾液には消化作用を助けるアミラーゼという酵素が含まれています。また抗菌作用のあるリゾチームという酵素も含まれています。物を食べるときに、すぐに飲み込まずに、きちんと口の中で噛むという習慣は、健康上とても大切なことなのです。そして、これは八重歯の防止にも効果はあります。

親の言うことは、よくききましょう、ということですね。

 

歯科医師 高倉寛

下高井戸〜明大前エリアで日本一の『街の歯医者さん』目指してます。